雨の季節に生まれたあなたへ
6月18日 東京では毎年 だいたいこの日前後に梅雨入りの宣言がされる
「せっかくの誕生日なのに お出かけできない」と拗ねるわたしに「毎年のことだから」と困ったように笑うあなたの顔が雨上がりに差し込む光に照らされて、いつもより少し見えづらい
いつか消えてしまいそうなあなたの横顔を逃さないように、必死に瞬きを堪えても 10秒と経たずにエアコンから吹き出る風に潰される
わたしが買ってきたキキョウの花は 既にあなたが持って帰ってきた花束に負けてしまって行き場がないのだけれど 花瓶を買いに行こうと嬉しそうに笑うあなたの顔を眺めているだけで わたしは幸せだと感じる
あなたはきっと自分が思っているよりも 周りから愛されているのに それになかなか気付けなくて たまにひどく卑屈になる それはわたしがどんなに愛を伝えても、足りなくて、それでも目の前に広がる花束の塊があなたを肯定してくれているのだと どうか気付けていたらいいなと思う
そしてわたしは あなたのその卑屈さにすら目を奪われてしまうほど 愛しくて 護りたくて その気持ちだけで 毎日呼吸をしている
今日はきっと雨は降り止まない
それでもここに あなたがいて わたしがいて それ以外何もなくても とても幸福な時間が流れている
きっと もしも 万が一
わたしがあなたに対する想いを無くしてしまったとしても 湿った空気と 雨に濡れたアスファルトの匂いが あなたのことを思い出させるのだろう ずっと離れることがない 雨の季節に生まれたあなたに囚われて わたしは残りの人生を歩んでいくのだろう
お誕生日おめでとう
あなたがたくさんの愛に包まれて 世界で一番幸せな日を過ごせますように